人月の神話を読み直した

最近自分の中では古い本ブームが起きていて、Code Completeを読んでいるのと同時にこちらも読んでいた。IT業界の古典中の古典、人月の神話である。

人月の神話【新装版】

人月の神話【新装版】

初めて読んだのはいつかわからないけどまあだいたい10年ぐらい前ではなかろうか。その頃はよく分かっていなかったが今読んでも完全に理解したとは言えない感じだった。まあ時代のバックグラウンドが違いすぎるというのも大きいと思う。何しろオリジナルは1975年。40年以上前である。オブジェクト指向という言葉が浸透していない時代。コードを印刷する時代だし、著者は真空管コンピュータに触れるような時代の方である。

ただ、その洞察は今も生きる。このへんがCode Completeと同じく古典と呼ばれながら今の時代でも話題に登り続ける理由だろう。

いちばん有名な本書の言葉といえば「銀の弾などない」である。狼男を倒す夢の道具はない→我々の業界の問題を解決する夢の道具はないという言葉であるが、銀の弾である理由、倒すのが狼男である理由もちらっとではあるが書かれていたのは知らなかった。

一番感銘を受けたのはやはり有名な言葉になっている部分。

  • 人月というのは神話である。人と月は交換できない。労力と進捗を混同していると著者が喝破してから40年後、まだ人間は労力と進捗を混同している。

  • 銀の弾丸はない。主な問題は当時からコミュニケーション問題(らの偶有的問題)であり、それは著者が予測する限り変わらないだろうと洞察して40年後、まだコミュニケーションは一番の問題である。さまざまな便利な技術は生まれたが、どれも銀の弾丸足り得なかった。

新装版ではなにかと加筆されており、18章に至っては「忙しい人のための人月の神話」ともいうべきダイジェストになっている。特段分厚い本ではないが、忙しい人はここを読めばこの本のだいたいのことは分かるようになっていた。

あまりおすすめする対象の人は思いつかない。どちらかというとプログラマでない人のほうが読むと良いことがあるかもしれない。もちろん時代の違いはいい感じに無視してもらわねばいけないが。役に立つから読むというより、IT業界一般教養の世界だと思う。